将棋の世界を人工知能が凌駕し始めたころ、プロのトップ棋士とAIとが闘う電脳戦というのが行われていました。
次々に敗れていくプロ棋士の中で、一人、人工知能の読み抜けを発見した阿久津八段が、単手数で勝利したことがありました。
いわゆるハメ手です。プロらしくないということで物議を醸しましたが、AI開発者は生粋の将棋指しとは限らないので、バグが生じていたこともあったのです。
だけど、そんな話は専門的すぎて、聞きかじった素人が簡単に理解するのは難しいところ、柚月裕子氏はそれを題材に短編『戦術的にあり得ない』を書き上げました。
どういうネットワークがあるのでしょう?彼女は、ジャンルの違ういろんな世界をこともなげに表現していきます。
文庫本の『合理的にあり得ない』(講談社文庫)には、このほか野球賭博を題材にした短編も取り上げています。賭け方やその計算式が描かれていて、すごいリアリティです。
ジャイアンツの選手が検挙された数年前の事件は、トカゲの尻尾切りで終わりましたが、実際には現在も脈々と生き続けており、暴力団の有力な資金源であることを窺わせていました。なるほど、テラ銭が1割ってのは、説得力がありますねぇ。
うーん、どの話も面白いんだけど、ドクターXの米倉涼子みたいな主人公には共感できませんでした。80点。