対談本が好きです。
ジャンルの違う達人同士がお互いに敬意を表しながら、言葉を引き出していくのが、とても分かりやすいからです。
そういうのを読みながら、トップランナーというのは理解力に秀でていて、相手が投げてきたテーマを自分の世界の言葉に置き換えるのが上手い人なんだなぁと思います。構造は、たとえツッコミの人と同じです。
だから、古舘伊知郎氏は手練れの聞き手だと思うのであります。
同氏が養老孟司氏との対談をまとめた『記憶がウソをつく』(扶桑社)は、二十年前のものですが、向学心を刺激するたくさんの言葉が詰まっていました。以下は、そのダイジェスト版です。
・基本的に、三年間持ち堪えた記憶は忘れることはない。
・酔っ払って記憶を失くすのは、意識障害である。
・トーキングブルースのような一人喋りでは、映像で記憶する「ローマンルーム法」を使っている。
・ヒトラーは夜の8時以降にならないと演説しなかった。アジテーションは暗いほどいいと知っていたのだ。
・理屈に訴える話は朝がよく、情に訴える場合は夜がいい。だから、芝居は夜の方が上手くいく。口説くのもそう。
・言語脳は左、音楽脳や絵画脳は右。
・音楽と数学は関係性が高い。
・芸術の能力を高めようとしたら、言葉の能力が低くなる。本当は、芸大の入試に外国語を入れるべきでない。
・音訓読みのある日本語は、脳を多言語の倍使っている。
・真っ暗闇だとカレーライスと豚汁の区別ができない。
・俳句の良し悪しは、脳内の五感バランスで決まる。
大学の講義を受講した気分です。