泣かせるパターンには限りがあるけど、笑うパターンは湯水の如くあると三谷幸喜が清水ミチコとの対談『たてつく二人』(幻冬舎文庫)で言ってました。
なるほど、お笑いの進化はプロ野球どころじゃありません。
草創期の漫才は、音曲や演舞の余技扱いで、落語やコントよりも下に見られていました。
あまり面白くなかったこともあるし、お客側の偏差値が低いため、付いていけなかったというのもあるでしょう。
だから、初期の笑いは同じ言葉の繰り返しであるとか、お約束の決めゼリフに頼るような構成であったように思います。
萩本欽一が画角を広げて素人いじりを始め、ビートたけしがスピードを持込み、明石家さんまが自己開示を研ぎ澄ましたタブーなしのトーク、島田紳助の毒舌ネタなどがテレビを席巻し、いつのまにか憧れの職業へと昇華しました。楽しそうだし、儲かりそうだし、モテそうだし。
それに引きずられるように、女性芸人のお笑い偏差値がジワジワと上がってきています。
『THE W』は5年目を迎え、オダウエダのコントユニットが王者となりました。
これについて、異論を唱える人が多く、ネットがザワザワしています。
確かに、笑いの質という点において、Aマッソと天才ピアニストが数段上を行っていると思いました。実際、平場で話したら、オダウエダは全然面白くなさそうです。ちょっと前に「だめよ、だめだめ」って言ってた人たちに似ています。
ではなぜ、チャンピオンになれたか?
その理由は、審査員にありました。
決勝で、彼女たちを推したのが、アンガールズの田中卓志・友近・笑い飯の哲夫。いずれも世界観にこだわったネタ作り職人です。
無から生み出す苦しさを十分に知り尽くしているので、セリフまわしの滑らかさや表情力、言葉へのこだわりなどとトータルで見るのでなく、発想のユニークさ一点で決めたんだと思います。
他の審査員を見ると、ミルクボーイの場合、パターンが決まっているので、世界観は関係ありません。
ヒロミと久本雅美は、笑いをドッカーンの量で考え、ハイヒールのリンゴは漫才師なので、ディテールに拘りました。
漫才とコントとピン芸の優劣を決めるっていうのは、見方に大きな違いが出るので、あくまで笑いの量と質から評価するのが正しいような気がするけどどうでしょう?
それでも他の二組に差があれば、こうはならなかったんだけどね。ほとんど拮抗していたのが運命のイタズラです。
それにしても、面白かった。個人的にはスパイクに注目しています。