高校大学と読書とは疎遠で、ましてや自分で文章を書くなんてことは想像もしなかったんだけど、会社で社内報編集担当者に選ばれて、読書の秋の企画の中で、自分たちで文章を書いてみようとの話になり、エッセイを任された私は作文の快感に酔いしれることとなりました。
以後、社内報の中にペンネーム「似非人」(エッセイストのつもり)で『天才は忘れた頃にやって来る』のタイトルで連載を持つようになり、蓄積された教養がなくても、このジャンルならいけると味を占めたのです。
そのため、私の初期の読書遍歴は、いろんな作者の随筆でした。大幅にインプットが不足していたからです。どちらかと言うと、プロの作家のものよりも他ジャンルから参入した有名人みたいなのが多かったのも特徴的です。
影響を受けた10人をランキング付けして発表いたします。
10位 林真理子
初期のころ、彼女はエッセイを乱発していました。『ルンルン』シリーズです。
当時は自身の外見やモテないことをネタにしていたように思うけど、変れば変わるものです。
9位 遠藤周作
昔、『本物は誰だ?』という番組があって、レギュラー回答者としてウソばかり言ってたのが記憶に残っています。
『ぐうたら』シリーズは、理想とする生き方の指針であり、作家はヒマそうでいいななんて思ってました。
8位 伊丹十三
『小説より奇なり』は衝撃の一冊でした。少し斜に構えて、西欧気取りの気障な文体はダンディズムの象徴であります。
7位 糸井重里
発想の豊かさは、コピーライターならではというところです。遊びが仕事につながっていく様は、文章の上手い大橋巨泉でありました。
6位 土屋賢ニ
哲学の通訳者として、こんなに面白く表現できる人は他の追随を許しません。
77歳ながら依然として現役で、週刊文春に連載しているエッセイの数々は、少し間を置いてからジワジワと効いてきます。
5位 嵐山光三郎
いつも怒っているかのような仏頂面で、バッサバッサと斬っていくさまは、編集者ならではの冷静さに裏打ちされたもの。
下ネタに逃げることないマッチョな文体は、昔の漢です。
4位 つかこうへい
この人が62歳で亡くなってしまったのが残念でなりません。
戯曲はもちろんですが、シニカルなエッセイの数々は、ハラスメントの限度を遥かに超えており、芸術に昇華させておりました。
3位 村松友視
文学作品に関してはピンと来ませんでしたが、エッセイのジャンルではプロフェッショナルぶりを発揮しております。
『私、プロレスの味方です』『必殺野球固め』は名作中の名作。常体と敬体を交えた文章技法に影響を受けました。
2位 東海林さだお
漫画はハズレが多く、もともと絵が上手い方じゃなかったので手抜き感が目立ちましたが、この人の文章能力は天下一品。
平易な言葉を巧みに操って、平凡な料理を美味しそうに見せることに長けておりました。家ではあまり、食べないんだろうな。
1位 椎名誠
質量共に、日本一のエッセイストだと思います。プロっぽくない独特の表現方法は、似ている人が思いつきません。
例えツッコミの先駆けともいえる言い回しの数々は、忖度からほど遠く、気持ちのいいものです。同性にモテる人は本物だと思います。
書棚を見ると、他にも
野田秀樹、林望、清水義範、清水ミチコ、三谷幸喜、木村晋介、深代惇郎、上前淳一郎、松永真里、小沢昭一、永六輔、南辛坊、島田紳助、筒井康隆、村上春樹、伊集院光、沢野ひとし、群ようこ、泉麻人、扇谷正造、青木雨彦、川崎徹、西原理恵子、出久根達郎、篠原勝之、山本夏彦、山里亮太、山口洋子、山口恵似子、山下洋輔、三浦朱門、佐野洋子、佐藤雅彦、鴻上尚史、高島秀武、高橋章子、戸板康二、原田宗典、桂文珍、景山民夫、丸谷才一、塩田丸男、井上ひさし、阿川佐和子、ラサール石井、ビートたけし、さくらももこ、若林正恭…
なんてのがありました。全部で約400冊。読んだなぁ。