本を読むスピードは人さまざまで、中には速読とかで、一冊を10分程度で読破する強者もいるようですが、そういう人はギャル曽根のようで、別に羨ましいとは思いません。感じ方が違うんだろうなとは思います。
私の場合、時速60ページと遅めで進みます。だから、400ページだと6〜7時間。集中すれば、一日で読み上げる計算となります。
ところが、作家によっては、90ページぐらいにギアが上がることがあります。
今野敏作品がそう。
特徴的なのは、会話体で進む文章で、文体が短く、余白が多い印象です。つまり、写真や挿絵が多いのと一緒で、ページをめくる手がどんどん進むのです。紙面にたくさんの隙間ができると、読むスピードが上がったように感じてテンポよく、リズム感が出てくる。
対照的なのが湊かなえの独白文体で、文意を確認するために戻ったりして、どよーんとする。理解しづらくなるのは、そのせいなんじゃないかなと思ったりしています。
会話体で進めるストーリーのコツは、素人とプロフェッショナルの組み合わせ。いろんな説明をカギカッコの中に収めることができるわけで、漫才におけるボケツッコミの補完関係が成立するんですね。新米刑事とベテラン刑事だとか、探偵と依頼者みたいな関係性の中で、説明のひと手間が加わって、ストーリーに流れが生じるわけです。
本日のオススメは、今野作品から『キンモクセイ』(朝日新聞出版)。
日米安保条約第6条に基づく地位協定は、日本の総理大臣をも更迭してしまう(鳩山由紀夫のこと)存在で、これの地雷を踏むと生命に関わるという類の話に、公安部が絡んで大きく展開していきます。特定秘密保護法や改正組織犯罪処罰法も気味の悪い法律だし、スノーデンによる盗聴告発問題だって我々の生活に無関係なわけではないと、ドキッとされっぱなしでした。
米軍と米国政府が一枚岩じゃないってのも、新しい視点です。平和ボケだからかなぁ?
いやぁ、これ、スリル満点のサスペンスでした。登場人物もそれぞれが魅力的に描かれています。90点といきましょう!面白かった!!