1960年代は、戦記漫画が一大ブームとなっておりました。
『あかつき戦闘隊』(園田光慶)『ゼロ戦レッド』(貝塚ひろし)『大空のちかい』(久里一平)『ゼロ戦はやと』(辻なおき)…
GHQによる思想統制の影響が薄れたこととプラモデル業界の躍進が背景にあったと思います。ちょっと違うけど、『サブマリン707』(小沢さとる)なんてのもありました。
高度成長の時代、そりゃ売れますよね、戦闘機や航空母艦。参考資料がいくらだってありますから。
漫画家が描きたいと思うより、編集サイドからの要望が強かったと聞いています。特集も組みやすいので。
テレビドラマ『コンバット』の影響もあったかもしれません。
子供たちの遊びに「戦争ごっこ」なんてのもありました。
そんな中、戦争崇拝というよりもむしろ、反戦色が強かったのが『紫電改のタカ』でした。当初は、鬼畜米英スタイルであったものの、戦闘や捕虜との交流を重ねるうちに、人としてどう生きるべきかに苦しみ、最後は特攻隊として飛び立って行くという涙なしでは語れないようなストーリーです。主人公の滝城太郎は、物語の進行と共に性格が大きく変化していきました。ちばてつやは、そのことで戦争の不条理と悲惨さを訴えたのです。伝わりましたよ。
多くの戦記漫画は戦闘シーンを中心に描かれていたので、PTAの反発を招き、70年代後半には消えて行ったように思います。
だけど、『紫電改のタカ』はひと味もふた味も違っており、今でも心の中にしっかり残っております。
(つづく)