何と言っても絵がキレイなのが手塚マンガでありまして、その美しさはカラーになって倍加します。普通、漫画は白黒なんですけどね。『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ブラックジャック』など、色付きのイメージが強烈に残っているのが手塚作品を象徴するものであります。
それにしてもアトムは別格の面白さでした。
21世紀の未来を舞台として、ロボット社会の到来を別にすれば、ことごとく現実を予言しています。これが1970年より前に描かれている。あらゆる漫画家が尊敬したのは無理もありません。創造力がぶっ飛んでいました。
ロボットなので、パワーがあって戦闘能力が高いのは当然ですが、心根が優しいってところが泣かせます。身長135センチの設定も子供に夢を与えました。学校の勉強ができたってところでは、PTAの支持をがっちり掴みます。当時の漫画キャラは、劣等生であることが条件みたいになっていましたからね。文武両道こそが本筋であるとキッパリ。
ともすれば暴力シーンが取り上げられがちなところ、いろんな配慮があったことでしょう。何より、顔の半分くらいのキラキラした眼力が強い。
私は舌の色が変わるのが嬉しくて、明治のマーブルチョコを買い続けました。
これに対抗したのは、テーマソングにまで入れ込んだ『鉄人28号』のグリコですが、こちらはロボットに感情がなく、リモコン次第でどうにでもなってしまうってとこが、今ひとつ魅力が足りなかったように思います。
それと、ウランちゃんの存在感。鉄人が男だらけのマッチョな世界だったのに対し、手塚マンガには色気があったのです。
あっ、『サイボーグ009』(石ノ森章太郎)は惜しくもランク外でした。後の『仮面ライダー』に繋がる名作ですが、アトムと比べられるとちょっと…ロボットヒーローもののポジションが被ってしまいました。
今思えば、漫画も立派な読書でありました。「この次はどうなるんだろう」が子供たちの創造力を育むのであります。
(つづく)