警察組織というのは、圧倒的な縦社会で上からの命令が絶対です。
そして、異常なくらい減点法による評価であるため、失敗は許されません。
「よくやった!」よりも「なんで、そんなことしたんだ!」が重く見られるので、正義感に燃えて自分を貫こうとすると、簡単に挫折します。
まぁ、それは多くの企業でも同じようなものなんだけど。
で、警察の失敗の最上級は冤罪です。犯人じゃない人をクロだと決めつけて、追い込んでしまう。
その極め付けが死刑判決で、そんなもん、間違いがあったなんて現実には認められるハズがありません。それは、検察も裁判所も同じ。
だからこそ、小説やドラマの題材として、取り上げられやすいのです。
今やってるドラマでは、長澤まさみ主演の『エルピス』がオススメです。佐野亜由美がプロデューサーとして絡んだドラマは、すべて当たりだとも言える。大友良英の音楽もいい。
そして、『正体』(染井為人著・光文社文庫)は、死刑判決が確定した犯人が、拘置所で発病したことから脱獄し、いろいろ姿を変えながら逃げ回るミステリーです。そんな訳ないだろうなんて思ったら、ダメ。受け入れましょう、状況を。まぁ、作者が描く登場人物が目に浮かぶようであり、こんな人いるよなぁばっかり。上手いんですよ、内面の人物描写。心の中で天使と悪魔が何度も闘います。伏線の張り方も見事で無駄がありません。「あとがき」まで面白いと思う小説は滅多にない。脱帽です。99点。今年度ナンバーワンのミステリーでありました。