都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

タイガーホース(2020/11/3分再掲載)

幼少のみぎり、頭が大きかった私は身体のバランスが取れずに転んでばかりおりました。その様子を見かねた祖母に、一日中「気をつけ!」の練習をさせられたのを昨日のことのように覚えています。一瞬は成立しても、しばらくすると左右に傾いてしまう。底面積が小さいってのも、あったかもしれません。

「この子は、気をつけもできないねぇ」

祖母の言葉は、トラウマでもあります。どうやら、普通の身体ではないらしい。

 

昭和30年代のこと、当時広島の小学生は制帽を義務付けられており、サイズの合うものを見つけられなかった私の母は、中学生用のやつを買ってきて、それの縫い目をほどき、広げながら改めて縫い直しておりました。入学前夜の話、これも鮮明に覚えています。

野口英世はねぇ、それでも頑張ったんだよ」

どういうことでしょうか?希望に満ち溢れた小学校入学前夜。

 

その後、下半身が発達し、少しずつ平衡感覚が磨かれて、運動能力は人並みになりました。躾にうるさかったおばあちゃんもひと安心です。

そうそう、運動会で使うリバーシブルの紅白帽は、適当に誤魔化してました。あんなの入るわけない。アベノマスクみたい。

 

学校を出て、保険会社のサラリーマンになった私は、職場で草野球を始めます。ポジションは、誰もやりたがらないキャッチャー。無条件でレギュラーです。痛いとか怖いとか関係ない。いろいろぶつけはしたけど、軟球ですからね、楽しくやっておりました。

そんな私が、選手を引退した理由は、プロアマ通じて野球史上におそらく例がないものでした。それは、

 

  ある年から突然、草野球にもヘルメットの着用が義務付けられた

 

ことによります。へっ? 布は伸びるけど、硬質のプラスチックは融通が利かない。運動具店のお兄さんが、真面目な顔で「63センチは国産品じゃありませんね」とバッサリ。無理して着用すると、ハーゲンダッツのダブルみたいになって、打てるもんじゃありません。捕手用のメットもしかり。審判は安全性を盾に、人権を無視します。

かくして、体力の衰えがなければ、やる気もマンマンの男が、ヘルメットが入らないという前代未聞の理由で引退を余儀なくされました。

そうか、プロ野球もそういう季節ですね。切ないなぁ。