都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

鎮魂

フィリピンまで足を運んで強制送還とした割には、その後の新しい事実がほとんど出て来ず、事件の深い闇を感じざるを得ません。

リーダー格の名前がアニメの主人公だというのは、犯人グループの幼児性を表しておりますが、オウム事件の組織も宇宙戦艦ヤマトの世界観を引き出して、メンバー間の符牒にしていたのを思い出しました。なんか、通じるものがあるようです、反社の人たち。

市川海老蔵が西麻布でボコボコにされた件で、初めて半グレという存在を知りました。

・徒党を組んで数的な有利を前提とした上で、手加減のない暴力行為を日常的に行なっている。

・麻布から六本木界隈にある多くのお店を仕切っていて、なぜか金回りがいい。

・芸能界にもお友達が多く、麻薬つながりがあるような、ないような。

…ってな感じらしい。

ヤクザの人たちと違って、普通にしてると普通に見えるので、芸能人と接点ができやすく、一緒に飲み歩いているうちにズブズブな関係になるってこともあるようです。友達に量を求めてはいけません。あくまでも質が大事なのです。

 

さて、久しぶりに推薦図書を。

今回は、昨年の私的面白本ランキングで1位とした染井為人の作品から『鎮魂』(双葉社)です。

ストーリーは…世間を騒がせている半グレ集団「凶徒聯合」のメンバーが殺された。 警察は暴力団や半グレ同士の抗争と見て捜査をはじめるが、それを嘲笑うかのように次々に「凶徒聯合」のメンバーが殺害されていく。 疑心暗鬼になっていく半グレの男たち。

ザッとこんな内容です。愛想がないけど、あんまり踏み込むと読んだときの感動が薄れますからね。

 

染井為人は、もともとは作家志望じゃありませんでした。

高校卒業後、グループホームで介護の仕事に就いたのですが、それで一生食べていくのは難しそうだと、派遣会社へ転職します。しかし、職場でトラブルを起こし、今度は芸能事務所へ。タレントのマネージャーになります。その会社は多角的に事業展開しており、いつの間にか舞台のプロデューサーに転身。そこで、脚本に興味を持つようになります。こんな風にすれば、もっと面白くなるのにと。

そうこうしているうちに、小説を書き始めるようになっていました。

まだ39歳とのことですが、いろんな世界を覗いていることで、手広く取材をした厚みを感じさせてくれます。経験が身の肥やしになっている。

知り合いの多さは、作家にとってプラスですね。

この作品は、95点。『正体』のときと同じことを言うようだけど、ほーんと人物描写が巧い。染井為人は人間観察の達人だと思います。後半へ進むにつれギアが上がって一気読みでした。