都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

棲月

毎回同じようなことを書いておりますが、今野敏の作品にはハズレがありません。

登場人物のキャラが立っているからですが、それぞれの個性をカギカッコの中にギュッと詰め込みます。ストーリーを会話体で進めるので、ドラマっぽくなります。

これのいいところは、読んでいて余白が多いんです。挿し絵があるようなもので、読み進むスピードが上がります。

そして、漢字とひらがなのバランスがいい。引き込まれるように、ページをめくらされていくんです。

会話体を多用すると、そのセリフを誰が言っているかが分かりにくくなるところ、彼は上司と部下、男と女など、違う立場で表現させていく。奥の手は、関西弁です。関西キャラを一人入れることで、説明調が抜ける効果がある。そのへんのキャラ付けが絶妙なんだなぁ。

 

本日のご紹介は『棲月』(新潮社)です。

現場の刑事が活躍するというこれまでの警察小説と違い、警視庁キャリア官僚の活躍を描いた隠蔽捜査シリーズで、主人公である竜崎伸也を杉本哲太、その友人でありライバルの伊丹俊太郎を古田新太がテレビドラマで演じています。

本作は、私鉄と銀行のシステムトラブルについて疑問を感じた竜崎署長が、管轄を飛び越えて捜査に乗り出し、警視庁本部と軋轢を生みながら、事件の解決へ向かうという話。事件としては、さほど意外性はありませんが、主人公のプライベートが自然に描かれていて、本当にいる人たちのように感じさせてくれました。シリーズの他の作品も見たいと思わせます。90点。