2010年4月の法改正において、死亡事件の控訴時効が撤廃されました。
これにより、未解決事件については、いつまでも捜査が行われることになります。いいような悪いような。だって、捜査を担当する刑事の士気は上がりません。時間の経過と共に新しい証言や証拠の可能性は低くなるし、人員だって必要最小限に抑えられてしまう。それで頑張れって言われてもねぇ。なので、2009年11月より警視庁に特命捜査対策室という専門部署が立ち上がりました。それって、なかなかバランスがとりにくい。機能すればするほど、今まで何をやってたのかとなるからです。だから、身内の協力が得られにくいんです。嫌われ仕事。
だけど、人が変われば見方も変わるわけで、担当者を変えるのは、それなりの意味があるものです。
『不可能な過去』(堂場瞬一著・ハルキ文庫)は、そういうテーマを題材に描かれています。
誤認逮捕の末、冤罪が確定され、民事で損害賠償まで認められた容疑者が、実は自分が真犯人であるとの告白状を送りつけて物語が始まります。
刑法には「一事不再理」という原則があって、一度無罪が確定した事件は二度と捜査対象にできません。その一方で、殺人事件の時効撤廃があるので、真犯人の追求は止められない。当事者たちの葛藤がよくわかります。
現実にはどうなんでしょうね? あのときの捜査が甘かったと言われたくないので、当時の担当者は協力したくない。何でもかんでもは教えてくれないでしょう。そして、そういう仕事に優秀な人材はなかなか送り込めない。現場の士気は上がるもんでしょうか?モヤモヤします。
そのへんが、うまいこと表現されているように思います。下から下から接していく。
ただし、登場人物へ思い入れることが出来にくいのは、いつもの堂場瞬一パターンです。
何が問題なのかはよく分からないんだけど、今ひとつ魅力が足りないんだよなぁ、堂場瞬一。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 15点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 15点
【合計】80点