都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

望み

いつまで経っても親離れができない子供がいれば、やたらと反抗期が早く、両親とほとんど口をきかない子供もいます。

後者の場合、学校における友人関係の影響が大きいし、祖父や祖母、それに兄弟がどう絡むかってのもある。そして、お金について。中高校生が遊ぶにあたっては、自由にできるお金がどのくらいかによって、付き合う世界が微妙に違っていたりします。

そんなような変数に囲まれた中で、人格が出来上がりつつあるのが子供の成長ってことです。

なかなか難しい方程式であり、正解もまた、よく分かりません。それが、それぞれの人間の物語。生涯独身者のストーリーはシンプルだけど、家族持ちは、子供の数が増えるほど、複雑になります。小説の題材としては、家族がいるほど面白くなる、そう思います。

 

『望み』(雫井脩介著・角川文庫)は、息子の友人が殺害された事件に端を発し、その逃走犯二名を含め、行方不明の少年が息子を含めて三人。一体、息子は加害者か被害者かって話なんだけど、たとえ殺人犯であっても生きていて欲しいと願う母親と、息子が人を殺めるなど考えられず、死んでいるとしてもやむを得ないと考える父親との葛藤を描いた作品です。究極の二択。

私は男性だからってのもあるでしょうけど、社会正義の枠組みから追い出されるのが怖いので、息子被害者説を支持しながら読んでいました。世間がどう捉えるかを意識せざるを得ないってこと。愛情よりも損得で考えます。ちなみに、登場人物の一人である娘も自分がどう扱われるのかが怖くて、父親と同じ立場でした。加害者になるぐらいなら、死んでいる方がいい。それだけに、母親が考えるたとえ殺人の共謀犯であったとしても生きていて欲しいと願う母性の強さについては、スゴいと思うのであります。いやぁ、よく練られたストーリーでした。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点

【合計】92点