前職の上司に宮城県の気仙沼出身の人がおりました。
トラックの運転手をしながら、大学を卒業した苦労人で、真面目になんとかがつくような一途なオトコでした。
お酒は弱いのに、「飲みに行こう」と仕事帰りに誘います。
これが、決まって職場近くのトンカツ屋。
最初にビールを頼むものの、一緒にオーダーするのがロースかつ定食で、彼はどんぶり飯をお代わりするのが定番です。
合いませんね、とんかつ定食とビールとお代わり。
だけど、頼んだものがサッと出てこないことですら、機嫌が悪くなることを知っている部下の我々は、そんな宴に付き合います。
そこで、こんな話をしてました。
「わかばやしー、田舎は暗いぞー」
「ハァ、そうですか?」
「うん、漁師町は暗い、なんたって、みんな誕生日が一緒なんだよなぁ…」
気仙沼のその村は、遠洋漁業の基地だったそうで、まぁそういうことです。
オトコ衆が、普段はおらないことや、肉なんて滅多に食べられないことや、みんな日に焼けて真っ黒だってこと…。
違う世界が拡がっておりました。
さて、NHKの連ドラは、岩手県の久慈市(ドラマの設定は北三陸市)が舞台です。
前シリーズ(『純と愛』)と違って、目茶苦茶明るい内容で、クドカン(宮藤官九郎)ワールド全開といった感じ。
主人公も爽やかで可愛らしいんだけど、圧巻は宮本信子の演技です。
もう本物の海女にしか見えません。
この人、伊丹十三氏が惚れ抜いて、彼女の演技を見せるために伊丹映画を撮り続けたという逸話が残っておりますが、それも頷ける話です。
いやぁ、すごいですよ。
大体、美人の役と造作に恵まれない人の役を演じ分けられる女優なんて、そうはいないでしょう。
今後の展開が楽しみであります。