小学校の高学年になると、夢と現実の狭間にいて、いろんな空想が弾けそうになります。
冒険とか秘密とかの言葉にワクワクする。
自分たちだけのコミュニティを内緒で作り上げようとするのが、大人の階段を昇るってことだと思います。
『パーマン』なんて象徴的で、ヒーローなんだけど、周りにはバレないようにしておくというドキドキが共感を得ると、そういうこと。
身近なところでは、秘密基地です。
高度成長のころは、そこらじゅうに空き地があって、滅多に人が来ないような場所がありましたからね。今だったら、親御さんが卒倒しそうな話だけど、昔の子供たちはそういうところで遊んでいました。私も薄っすらとした記憶が残っています。友人たちと穴を掘るんだけど、大概の土地は固くて、シャベル程度では歯が立ちません。だから、しばらくすると飽きるんです。あばれる君みたいにはならない。
結局、現実の厳しさを知るわけです。ロマンはあくまでもロマンだと。それでも憧れはある。なので、『スタンド・バイ・ミー』みたいな話が郷愁をそそるんです。
『夏の騎士』(百田尚樹著・新潮社)は、トム・ソーヤとドン・キホーテを混ぜたような甘酸っぱい青春小説です。
百田尚樹という人物は、右翼の度が過ぎるのと、発言がどぎつ過ぎて、むしろ嫌いな側にいる人ですが、悔しいかな作家としての能力は認めざるを得ません。もしかしたら、極端な性格が故に、表現が突き抜けるのかも? まぁ、普通のことを描いてもねぇ。太宰治も川端康成もみんな、自分勝手で変な人でありました。作家に常識を求めてはいけない。
夏休みの季節だからこそ、ピッタリの推薦図書です。中学生ぐらいに読んでほしいなぁ。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点
【合計】87点