都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

3位じゃダメなんですか?

新井カープセ・リーグ2位通過を前にして、独特な選手起用をしています。

それは、勝つことよりも選手のプライドを尊重していること。実績のあるベテラン選手を簡単に控えに回すようなことをしないんです。會澤翼秋山翔吾、それに西川龍馬、菊池涼介などを先発で出場させた場合、チャンスに代打を送らず、そのまま打席に立たせているってところ。交替させるのは、ランナーとして出塁したときに、代走を送るケース、あるいは守備固めを使う場合だけなんです。打てなそうだから、もっと可能性の高い打者を代打に起用するなんてことは、ほとんどしていませんでした。

先発投手にしてもそう。四本柱と決めた大瀬良大地・九里亜蓮・床田寛樹・森下暢仁のローテーションを崩さず、調子の良さに関係なく試合を任せました。イニングの途中にノックアウトされたような形では、マウンドを降ろしません。リリーフ投手もしかり。栗林良吏・島内颯太郎・矢崎拓也を中心に、任せたイニングについては、後に引かない。あくまでも、その回を全うさせようとします。

これは、原辰徳監督や立浪和義監督らのヒステリックな選手起用とは対照的で、ちょっと悪いからといって、交替させるようなことは、絶対しないように、自分を縛り付けていました。

開幕前に「チームは家族だ」と言い切った話にブレはありません。頑固って言えば頑固。自分の言葉に責任を持っています。

終戦、勝てば2位が決まる状況の中、三連覇に貢献した一岡竜司投手の引退試合だとして、貴重な選手枠を削り、あくまでも選手の事情を優先させたのです。

2位通過となれば、クライマックスシリーズを地元で開催できることになり、何より2〜3億円の収入増が見込める。財政難のカープにとっては、来年度の補強費に回すことができ、3位との差はあまりにも大きな違いだったんだけど、新井貴浩監督は、情を大事に考えたんです。

そういうのって、自軍の選手たちには響きます。

監督が、選手のプライドを守ってくれるってこと。そう言えば、試合後のインタビューで、結果を出せなかった選手を腐すようなコメントは一度もありませんでした。

現役時代、二軍で鍛えられて這い上がり、猛練習を重ねた上で名球会入りを果たしたこと。不慣れな三塁守備では、エラーを重ね、心ないファンから罵声を浴びたこと。金本知憲の後を追ってタイガースにFA移籍したため、裏切り者扱いされたこと、などなど。決して、順風満帆でなかった過去を噛み締めながら、自分がイヤだと思ったことをしないようにしているのが、ひしひしと伝わります。そういうのって、勝負に徹するという意味では、余計な感情なのかもしれないけど、監督を男にしたいと言うような求心力は計り知れないものがあります。

プロ野球のファンは、ファミコン野球の愛好者みたいなのが多く、データ優先でメンタル的なことを無視しがちですが、現場は生身の人間の集まりであり、芸術家である選手たちは想像以上にプライドや見栄がある。監督やコーチは、そこのところを理解していないと、落ちこぼれを生むことになり、知らず知らずのうちにチーム方針に背を向けるようなマイナスの因子を抱えるようになります。

以前、バレンタイン監督が「選手が10人いたら、私のことを好きな選手が3人いる。大嫌いな選手も3人いる。残りの4人は監督のことなんてどうでもいいと思っているだろうが、そのどうでもいい選手が大嫌いに引き込まれないように注意して見ておくのが、チームをまとめる最善の方法だ」と言っていましたが、新井貴浩は、10人全員に同じ方向を目指すよう理想を掲げました。勝負に徹する上では、甘っちょろいんだけど、そういうチームがあっても良いと思います。幸せの形は一つではないと。

来季以降、カープにはプラスアルファのエネルギーが乗っかります。個人主義の世の中にあって、こういう在り方は珍しいんだよなぁ。