今は死語になってしまいましたが、その昔、モテるオトコの要素は「三高」だと言われておりました。
高学歴・高身長・高収入です。
これを見事にクリアしていたのが広島大学工学部出身で、身長188センチの売れっ子芸人であるアンガールズの田中卓志47歳です。
ところが、世間は「抱かれたくない男」第一位(2017年)に選出するなど気持ち悪いとレッテル貼りをし、本人もそれに合わせるような立ち居振る舞いをしていました。理系かつ男三人兄弟で、気弱な性格が女性を遠ざけていたように思います。
それが、今年になって伴侶を得て、憑き物が落ちたかのように好感度アップを果たしたのは、出川哲朗を見るようでもあり、なるほど配偶者の有無ってのはこれほどまでに印象を左右するものだと改めて思わされました。
『ちょっと不運なほうが生活は楽しい』(新潮社)は、そんな田中卓志の頭の中を覗かせるエッセイで、お笑い芸人の書いたものは、私小説っぽい見てはいけないような作品が多いんだけど、本作は飾ることがない正直な彼の人柄なんでしょうね。ほのぼのとさせられました。
この中で、ハゲいじりのくだりが面白い。
薄毛の話題は、人によって感じ方が違うので、美味しいパスが来たとばかりに一人ではしゃいでいると、そばで傷付いているオトコがいるかもしれないと気を回しているところです。何を言われても平気な人、関係性が薄い人にいじられるとイヤな人、ハゲの人に言われるのは構わないけどフサフサの人だとイヤだと言う人、そのイジリがウケるならいいけど滑ったらイヤな人…それらを微妙に嗅ぎ分ける感受性の持ち主が田中卓志でありまして、決して言いっ放しにしないってとこ。みんなに好かれる所以です。
その優しさは、母親譲りでありまして…
田中家では、春に飛来するツバメを歓迎し、外敵から守るため、部屋の中での巣作りを容認していたと言います。
なので、家の中を自由に飛び回るツバメ。家族はフンを避けるため、食事中はみんな帽子をかぶっていたんだとか。
犬や猫を家族同様に扱う人がいるんだから、こういうのもありっちゃありだわ。意外にいろんな虫を退治してくれるのかもしれませんよ。面白いねぇ。