明治維新以降、日本の資本主義は特権政商資本の政府権力への癒着と政商の手厚い保護のもとに育成されてきました。
三菱や三井を始めとする財閥とそれを結ぶ政商、そして政治家たち。特に、国家的な規模の投融資に関係が深い案件は、動く金額がとてつもなく大きいため、外国を交えた複雑なおいしい話が舞い込んできます。
だからこそ、政治資金規正法では、外国からの表立った献金を一切禁じています。
昔、勤めていた外資系の保険会社では、創業者が政治家との繋がりが多く、その絡みでいろんなお誘いやお願いがあったのですが、この法律のおかげで断りの口実があるため、金銭面では随分と救われていたように記憶しています。単純な交際費レベルなら、どうってことなかったのです。
なので、あらゆる法律の条文に精通していた田中角栄が、アメリカ企業からの五億円ぽっちをダイレクトに受け取ったハズがないとするのが『ロッキード』(文藝春秋)における著者・真山仁の主張です。
真山仁は、社会派のミステリー作家ですが、田中角栄を軸に繰り広げられた「ロッキード事件」とは何だったのかを徹底的に取材してまとめ上げました。ほんの少し前の出来事でありながら、謎の多いこの事件を掘り進めていくと、いろんな矛盾点が浮かび上がるんです。
(つづく)