都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

トヨトミの世襲

私が通っていた私立の高校は有名人の子弟が多く、1年F組では紅白常連歌手Mの弟、3年N組では自民党総裁候補の息子なんかと同じクラスでした。けれども一番の大物は、2年H組で一緒だった愛知県からやって来たTです。何でも東京の家にばあやみたいな人と暮らしていると噂で運動神経抜群の彼は、まるで運動会当日みたいな重箱にぎっしり詰まった弁当を早弁しておりました。どこか人を寄せつけないような空気を醸し出しながら。

 

『トヨトミの世襲』(小学館)は、覆面作家・梶山三郎の『トヨトミの野望』『トヨトミの逆襲』に次ぐ最終章です。

名乗り出ると、いろいろ差し障りがあるからなんでしょう、自動車業界に近いところで取材した内容を生々しく取り上げて、直面する問題、例えば「自動運転化」「環境問題」「EV対応の遅れ」「国内市場の先細り」「技術の衰退」「下請けイジメ」「ディーラー組織への介入」などが詰め込まれています。

黒字であっても批判を受けるような大企業、ましてやその会社のトップともなれば、常人には想像がつかないストレスに晒され、人間関係もドロドロしたものになるでしょう。そして、その目は近いほどに苛烈になる。戦国武将にも似た権力闘争です。

我が子には美田を残そうとする親心ってのも、歴史を振り返れば枚挙にいとまがないわけで、「バカ息子」だと言われない、言わせないプレッシャーとの闘いも、七光の闇の部分であったりするのです。そういうのは、本当に近くで見ていないと分かりません。梶山三郎って、誰なんだろうと思ってしまいました。

ところで、私が注目しているのは豊田章男会長が50億円の私財を投入したとされる裾野市の未来の実証都市『ウーブン・シティ』です。レゴで作り上げた街に本当に人を住ませるような話。まるでお伽話です。そんなことができるのも、国内ナンバーワン企業だからこそなんですね。

ちなみに「ウーブン」とは「織られた」の意味。網の目のように道が織り込まれ合う街の姿から名付けたといいます。グループの祖業は自動織機ですから。う〜ん、夢が溢れているのであります。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 20点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 19点

【合計】92点