今から30年ぐらい前、保険会社の広報部勤務時代にインターンシップで早稲田大の学生Mがやって来ました。
頭脳明晰で容姿端麗。こんな男がいるんだなと眩しく映ったものです。
そんなMが普通とちょっと違っていたのは、ナンパを研究していると公言していたことです。
実践ではなく、研究だと。
彼の話によれば、いろいろ試行錯誤を繰り返した後、確率が高くなるのは、タイプの異なるもう一人の男とペアを組んで、ターゲットも二人組の女性を狙うってことらしい。一対一じゃなくて二対二。そして、自分たちは早稲田大の文化祭の実行委員で、可愛い娘の写真を集めているってのが切り口なんだと言います。スマホがないころの話、現像した写真を送るので、住所とついでに電話番号を聞き出すのがポイント。これが、ビックリするほど上手くいくんだそうで、カメラに投資しつつも、充分に元が取れたと胸を張っていました。
甘いマスクと名門大の学生ってとこがミソなんだけど、なるほどのストーリー性は、今だったらオレオレ詐欺に繋げていくんでしょうね。考える人は、ナンパについても深く考えるんだなぁと感心したものです。
『半暮刻』(月村了衛著・双葉社)は、ホストクラブを題材として、二人の男の生き様を描いた物語です。
高額な請求で、風俗に沈めていく手口は生々しく、どうやってネタを仕入れるのか知りたいところですが、ヤクザと半グレ組織の繋がりがドロドロしていて、闇の深さをたっぷり味わいました。
世の中には正業に就くことができない半端者が一定数いるわけで、暴力団みたいなしっかりした(?)受け皿がなくなると、行き場を失って世の中の秩序から程遠いヤケクソみたいな輩が増えるってこと。数手先を見通せない人間は、非常に危険であると再認識いたします。
途中、ダラダラと中だるみがあるのが残念ですが、上から下まで世の中の縮図を見ることができる一冊だと思います。時間のある人は是非‼︎
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 19点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点
【合計】88点