都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

夜の谷を行く

あさま山荘事件は、テレビの映像を通じて強烈な印象として残っています。

建物を鉄球で潰すさまは、映画を観ているようでもあり、現実に起きているのが不思議でさえありました。

当時15歳、中学生だった私は政治的関心が薄く、事件の背景を知ろうとさえしていません。ただただ、何かスゴいことになってるなと。

学生運動を行うような人たちは、社会のルールからはみ出していて、その不満を吐き出そうと暴れているという印象でした。

だから、事件の背景を説明されてもピンときません。そもそも何と闘っているのかさえ分からない。

このときの共産党のイメージが悪過ぎて、今に至っているように思います。

 

『夜の谷を行く』(桐野夏生著・文春文庫)は、永田洋子らの赤軍派メンバーにくっついていて、5年ほど投獄されていた主人公のその後を描いた事実混じりのフィクションです。過去と決別したつもりでいても、簡単な話では済まされず、親戚付き合いもままならない。触れられたくない過去に怯えながら、他人と距離をとって生き続けていくのは苦しいものです。

物語の中で「総括」という言葉が何度も出てきますが、そのこと自体の意味も分からず、単純なことを複雑に仕立てあげて哲学を論じ合っているような若者の姿が、当時の空気を映し出しているような気がしました。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 15点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 15点

【合計】77点