都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

ガイアの夜明け

バブルの末期、フジテレビの若者向け深夜番組に『カノッサの屈辱』というのがありました。

11世紀の終わり頃、聖職者の任命権をめぐって皇帝とローマ教皇が対立し、結果、皇帝が屈服した西洋史の故事をそのままタイトルとしたもので、番組の内容とは全く関係がなかったのだけれど、進行役の俳優・仲谷昇が教授の体裁をとって、現代日本の消費文化史を歴史上の出来事になぞらえながら、大学の講義さながらに進めていく形態を取っていました。

当時は何よりもオシャレであることがキーワードとなっており、知的好奇心を刺激する引き金になっていたのが、番組タイトルだったのです。

多くの人がギリギリ知らないけど、知っていて欲しいラインが絶妙です。

そんな往年のフジテレビスタッフのセンスを受け継いでいるのが、今のテレビ東京のように思います。クリエイティブにとって大事なのは、モノマネしないこと、新しさを追求するプライドを忘れないこと。大企業になってしまうと、失敗を恐れるため保守色が強くなり冒険しなくなるのは、エンタメ業界にとって決していいことじゃありません。

そのテレビ東京の番組において、カノッサ臭を漂わさせるのが、『カンブリア宮殿』と『ガイアの夜明け』です。

親会社が日経新聞なので、経済を題材とする番組作りは会社の意向に沿ったものですが、そこに敢えて顧客の注意を惹きつける要素を加えたのが「カンブリア」であり「ガイア」なのです。

「カンブリア」とは、古世代の区分の一つ・カンブリア紀を指していて、この時期に生物が突如一斉に進化して、多種多様な形態のものが現れたことからの引用だと言います。新しい発想の経済人が、未来への道を模索して将来の爆発に繋げようとするってとこ。気持ちが伝わります。
「ガイア」とはギリシア神話に登場する大地の女神を意味し、のちにノーベル賞作家のウイリアムゴールディングが地球を指してガイアと呼んだことから「ガイア=地球」という解釈が定着しているんだそうで、番組では日本と海外の経済動向やビジネス事情にスポットをあてて、闘い続ける人々の姿を描いています。

 

年初に放映された『ガイアの夜明け』では、日本最大級の洋上風力発電所の建設現場で入社4年目ながら現場監督の一人として抜擢された清水建設の女性社員(26歳)の密着取材が取り上げられました。

スゴい会社ですね。人材は豊富なんだろうけど、敢えての登用。そんなに小さなプロジェクトじゃありませんから、なかなかの英断です。

番組は、若い女性社員の成長物語として、温かな目線で描かれていた。と思ったのですが、放送から1ヶ月半が経過してからSNSで炎上しているんだそうです。
それはある朝、早朝の定例会議を寝坊のため欠席してしまったシーンを指してのものでした。

この社員が寝坊したにも拘らず、食堂で朝食をとってから事務所へ顔を出したのが気に入らないという話です。直属の上司である工事主任は「気をつけてください」と一言のみでしたが、広報担当者が代弁する形で「遅刻したら、飯を食う前に上司に謝りに来い」と叱責したのです。

安全管理がなにより求められる建設会社において、現場監督の重責を担う人物が寝坊することそのものに加えて、カメラの前で叱責した広報担当者の是非も問われました。切り取られて、文脈がわからなくなった結果です。SNSでは「肝が据わっていて良い」といった好意的な声があったものの、無責任だとかパワハラだとかいろんな矢が刺さりました。そこじゃないのにねぇ。

何かにつけて粗探しするような社会は健全とは言えないのであります。