都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

魍魎の匣(もうりょうのはこ)

保険営業をしていたときの話ですが、担当していた代理店のKはどっかから「イメージトレーニング」というネタを仕入れてきて、それを顧客に講演して回るという独特の手法でセールス展開していました。割り箸を名刺で切ってみせるのが売り物で、聴衆は新興宗教の教祖を見るかのように、話に吸い込まれていたのです。その上での営業展開。なるほど、いろんなアプローチ法があるもんだと感心したものです。

割り箸を切断するのにはコツがあって、誰でもできることなんだけど、その前提となるのは成功できるというイメージ。つまり、出来っこないと思っている人はいつまでも出来ない。信じる者は救われるって成功哲学の話です。

似てるけど、ちょっと違うのが占い師の存在です。その人の現在を言い当てて、将来を予見する。これはコールドリーディングと呼ばれる心理学の手法で、人間観察がベースとなっています。大体が何の悩みもなければ、手相なんか見てもらおうと思いません。だから、入り口をノックした時点で、問題となるポイントがかなり絞り込まれているものです。

そして、その発展形が霊能者です。霊能者は、占い師と違って未来のことを言わない。だけど、過去の不幸を言い当てる。その上で壺を買えなどの提案を行う。霊感商法もまた、心理学の達人なのです。

さらに上を行くのが宗教家であり、信じ過ぎる人々は、詐欺のターゲットでもあるのです。だから、宗教と心理学と詐欺とは親和性が高い。ミステリーで盛んに取り上げられるのは、そういう繋がりがあるからです。

 

魍魎の匣』(京極夏彦著・講談社文庫)は、オカルトホラーミステリーです。

1996年の作品ですが、そこそこ評判が良さそうだったので、取り寄せました。これが文庫本にも拘らず、1,060ページ。漢字の使い方が独特であり、文体もゴツゴツしているので読むのにめちゃくちゃ苦労しました。てか、マッドサイエンティストが登場するので変なんです。常軌を逸した変態小説。どうも京極夏彦という人は、こんな感じのものを得意としているようで、一部の熱狂的マニアに支えられているような気がします。だけど、万人受けは絶対にない。と思ったら、この話はベストセラーで映画にもアニメにもなっているそうです。つまり、若い子たちの支持もあるようで、私の方が時代からズレているのかもしれない。そういえば、世界観としては『鬼滅の刃』に似ているのかも。これも観たことないんですけどね。審美眼がズレているのかなぁ?

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 12点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 13点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 11点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 12点

【合計】66点