都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

大誘拐

ここのところ二階俊博の50億円だとか、世耕弘成の裏金だとか、その秘書が企画した過激ダンスショーであるとか、政治スキャンダルに事欠かない和歌山県ですが、面積の八割以上を山林が占めていて、平野が一部に限られているというのが地政的な特徴です。しかも、紀伊山脈を中核とする標高1,000メートル前後の山岳地帯は結構奥深く、温暖で雨が多いため樹木がよく育つので、「木の国」と呼ばれていました。「紀の国」の由来です。

 

小説『大誘拐』(天童真著・創元推理文庫)は、和歌山県の山林王を誘拐する物語です。

この作品は、1979年に日本推理作家協会賞を受賞したもはや古典ですが、身代金が100億円と突き抜けた高額であることと、被害者であったハズの老婆がいつの間にか犯人グループを支配して首謀者になっていく奇想天外さが評判となり、今も重版を続けています。

その背景として選んだ和歌山という土地柄が絶妙であり、作品の登場人物を際立たせているように思います。

私はずっと前に、映画で観ておりました。

主役を演じたのが、日本一のおばあちゃん女優として知られた北林谷栄で、樹木希林より前に老け役を極めたハマり役だったのを思い出します。

まるで、当て書きをしたかのような、そんな小説で、結末が分かっていながらも充分に楽しめました。

残念なのは、文体ですかねぇ。時代を遡ったときに、ファッションセンスが古いのと同じように、文章センスも変化するようで、現代調に慣らされていると、陳腐に感じてしまう。それは仕方ないですね。いや、点数は伸びないけれど、押さえておくべき一冊だと思いました。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 17点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点

【合計】84点