都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

残像

小4のとき、同じクラスだったツトム君のオヤジさんは、市会議員でした。

友だちのお父さんが、どんな人で何の仕事をしてるかなんて、知らないのが普通ですが、選挙に出る人は指名手配よろしくそこらじゅうにポスターが貼られます。

ツトム君の父親はヒカルという名前で、見事に禿げ上がっていました。

これが、小学生的には分かりやすくオイシイ話で、クラスメートはここぞとばかりイジり倒します。イジメっちゃイジメ。イジってる側にはイジメの認識はありません。昔の方が禿げてる人への風当たりが強かったというのもあったように思います。昭和40年ごろは、みんな痩せてましたからね。立候補者を含め、社会全体が総じて今より若かったというのもありました。

この手のイジリは自分のことじゃないので、何ともイライラします。政治家を親に持つと、○○の息子・娘と呼ばれてしまうのが宿命なんですけどね。露悪趣味のある石原良純は特殊です。多くは、話題とされること自体を嫌がっています。

 

『残像』(伊岡瞬著・角川文庫)は、過去に犯罪に手を染めた女性たちと元弁護士がおんぼろアパートで共同生活をしているところへ、ひょんなことからそのアパートを訪れることになった浪人生の主人公が、過去への復讐に巻き込まれていくという物語です。幼児虐待、詐欺、暴行、脅迫などさまざまな要素を含んだミステリーに仕上がっていて、そこに屈折した政治家の息子が絡んできます。

伊岡作品としては、珍しく爽やかな展開で、道尾秀介の『カラスの親指』を思わせるような感じ。あぁ、道尾氏もイヤミスの人でした。そういう人が、たまにハッピーエンドも書きたくなるってとこ、分かるような気がします。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 15点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 17点

【合計】80点