角田光代のエッセイ『よなかの散歩』(新潮社)の中に書かれていた「女子校的」考察が面白かったので引用します。
「女子校に在籍したことがある人は、濃淡にかかわらず女子校的部分を持っている、というのが私の持論である。
(中略)
私の思う女子校的なものとは…
・男子、男性を別の生物と見なしている。根本的理解はあり得ないと無意識に思っている。
・理想の男性像があり、そんな男はいねえよ、と自分で思っていてもその理想を捨てられない。
・悪口で盛り上がるすべを知っている。全く悪口を言わない人を友だちと見なさない。
・自分の自慢が苦手。自分の自慢をするくらいならば、己のダメ話を自ら暴露した方がマシ。
・写真を撮るとき、おすまし顔ができず、わざわざ変な顔、変なポーズを作る。
・人間関係のバランスに、妙に敏感。
素晴らしい。私の人生経験に照らし合わせても、しっくりくる話であり、言わんとすることがよ〜く分かります。
観察力の達人である作家のエッセイからは得るものが多く、感受性にノックを受けているような気持ちになるのです。
『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子著・新潮社)は、斬新なタイトルに惹き寄せられました。
過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドルなどを取り上げた短編集です。SNSでの危うい人間関係にも斬り込んだり、コロナ禍の空気感を描いたりと、生きにくい今の世の中で、もがきながら進む人々を皮肉たっぷりに表現しています。
この感じ、女子校的だなぁとネット検索してみたら、柚木麻子は案の定、中高私立の女子校出身者でした。なんか、嬉しい。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 20点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 17点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点
【読後感】爽快感・オススメ度 16点
【合計】86点