島九段が用意した宿題は、指し手の是非ではなくて、実戦心理や感覚を問う、全く新しいタイプのものでした。
そういうのって、理科系でなく、文科系の世界。
将棋が表現力でもあると捉えるのが、島九段の美学です。
この宿題を掲げて、広報展開すると、北は仙台から南は鹿児島まで、熱狂的な将棋ファンの応募が三百名を超えました。
入場料は、二千円でも、タイトル戦常連のトップ棋士三名が講師陣ですから、これは贅沢です。
集まったお金はすべて、がんで父親を亡くした高校生のための『がん遺児奨学基金』に寄付します。
大きな成果となりました。
三氏の講義もそれぞれの個性が存分に発揮されて、中身の濃いものに。
そして、最後の模範対局では、森内VS佐藤戦を島九段が解説。
そして、聞き手は私がやることになりました。
夢の実現です。
こんな、趣味と実益(?)を兼ねたイベントは、四年間続きました。
以来、調布の町で将棋ファンに会うと、私は“先生”と呼ばれるようなったのです。
インチキっぽいねぇ!?
(つづく)