日韓戦に勝利して有終の美を飾ったプロ野球ですが、ジャイアンツの凋落に伴って選手の意識が変わり、これまでの常識が大きく変化しているのを実感させるシーズンとなりました。張本勲や広岡達朗、あるいは落合博満でさえ時代遅れになったと思わせる現象が起きています。以下にまとめてみました。
①投手の酷使が嫌われるようになった
先発投手の中六日起用は当然で、その球数管理から一試合に100球を超えることが珍しくなった。その結果、勝利投手となるハードルが上がり、20勝どころか10勝以上をマークするのも難しくなっている。絶対的なエースが育ちにくい環境で、球団は先発6人の頭数を揃える補強を重視するようになった。頭抜けた投手がいるよりも粒を揃えることが大事であり、阪神とオリックスが強いのは、それによって安定した試合運びができるところにある。
救援投手もしかり。三連投させるようなチームは酷使が祟って連覇ができないのはもとより、投手たちが首脳陣に不信感を抱くようになるってのがポイントで、ベンチとの信頼関係は成績に大きく影響するのだ。
②ヒット3本でも点が入らなくなった
球場が広がって外野手に守備力が求められるようになり、肩の弱いレギュラー選手はむしろ希少種となっている。そのチームがどういう考えでいるかは、左翼手を見ればわかる。ポジショニングも重要で、守備走塁コーチの存在が大きくなっているのである。
そして、ヒット3本で得点するために、いろんな策を巡らせる必要がある。いわゆるベンチワークだ。「あと一本が出なかった」と言うリーダーは、自分の無能さを曝け出しているに過ぎない。
③捕手の併用が当たり前になった
全ポジションの中で、キャッチャーほど相手投手の配球を読める人はいない。だから、打力があって当然なのだが実際はそうでもない。それは、捕手の仕事が重労働だからだ。最近は、複数の起用が当たり前になっている。怪我の多いポジションでもあり、一人に任せっぱなしではリスクが大きいのだ。
④即戦力の概念が変わりつつある
おそらく今年の新人王は、セ・リーグ村上頌樹、パ・リーグ山下舜平太といずれもプロ入り三年目の選手が受賞すると思われている。プロとアマの実力差が広がっている証であり、ドラフト時の即戦力だとする評判は全く当てにならない。高卒の場合、金属バットの影響が大きく、またアマチュア球界のストライクゾーンはかなり甘くなっているのが壁となっているようだ。
投手の場合、フォームのクセやクィックモーションの矯正にも時間がかかる。
そこで、二軍三軍での育成能力が問われている。そして、選手を見切る時間も早まっている。
⑤外国人野手はアテにならない
これも球場の大きさが広がったことが関係している。外国人のパワーヒッターが目立たなくなっているのだ。日本の投手の変化球の精度が高いのも厄介だし、30過ぎてからの来日だと、アジャストするのに間に合わない。
ただし、外国人投手は充分に戦力化している。セットポジションに難がない制球力のある150キロ超えのパワー系は、間違いなく活躍する。
⑥三割打者が珍しくなった
ストレート150キロ超えの投手が普通になり、6回以降に出てくる中継ぎ投手ですら攻略するのが難しくなっている。こうした投高打低は、日米共通の現象でもある。レギュラークラスは2割6分程度で御の字なのかもしれない。
⑦スペシャリストが必要
盗塁はリスクだと考えるようになったので、作戦の選択肢が狭められている。
しかしながら、終盤における一点を取りに行く野球が勝敗を左右させるので、犠打や代走のスペシャリストがゲームの鍵を握っている。一芸に秀でていれば、息の長い現役生活を送れるのだ。日本のプロ野球では、8〜9人の控え選手を登録できるってとこ、どう考えるかだ。
⑧監督は二軍経験を求められるようになった
大卒の選手が増えたこともあって、カリスマの強い締め付けだけではマネジメントができなくなっている。
二軍の選手たちに、どこまでの参加意識を持たせるのが今どきの監督の条件なのである。
⑨ヤクザっぽいファッションが消えた
大谷翔平に見られるように、最近のトッププレイヤーは遊び歩かなくなっている。それは、目指すところがメジャーリーグにまで広がっているので、いい気にならなくなったからだ。もっと上を目指すならば、遊んでいる場合ではないと。
SNSの進化により世間の目が厳しくなっているので、日常的に見られている人たちの意識の高さは想像以上だ。
⑩巨人一辺倒でなくなった
ジャイアンツがFAが無駄だということを証明してくれて、みんなの目を覚まさせたようなところがある。多くの選手が巨人にこだわらなくなった。畏れなくなったとも言える。余計なプレッシャーがかからないので、呑んでかかられることがなくなった。神通力が消えたのだ。
ってことに気がついていないのは、讀賣グループ自身であったりする。
常識は時代と共に変わっていくのであります。