都会のネズミと田舎のネズミ

時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。

スペイン①

前職で、保険給付金の不払い折衝を担当していたとき、部下にSという男がおりました。
Sは、日本の最高学府を出たいわゆるインテリで、たくさんの知識を蓄えていましたが、対人能力が弱く、お客様との交渉ごとがなかなか上手くいかないため、苦戦の毎日でした。
そういうのって、表情が乏しいのが原因なんです。
感情表現が弱い人は、表情力がない。笑顔に爽やかさがない。
表情力がないと、異性にモテないのは仕方ありませんね。どうでもいいことなんだけど。

でもって、そういう時に、なぐさめたり励ましたりするのが上司の仕事です。
彼が頑張らないと、「ピッチャー交替、オレ」ですから!?

酒が飲める社員は、簡単です。
一緒に楽しめばいいんだから。

面倒なのは、下戸の社員。
飲まない社員を放っておくとエコヒイキになるので、違う形でのコミュニケーションを考えます。
聞くところによれば、Sは学生時代から市民楽団に所属しており、その中でオーボエなるものを演奏しておったと。

  「へぇ~(何だ、オーボエって?)負け犬のオーボエ、なんちゃって」
    「……」
  「……」
    「そうだ、来月の13日に演奏会があるんです。ご招待しますから、是非いらしてください」
  「う、うん、ありがとう。13日か。オーボエとかなきゃ、ネッ!」
    「…ハ、ハイ」

吹奏楽ねぇ。
な~んか、暗いんだよな、Sは。
モテないよ、そういうの。
スポーツしようよ。その後は飲み会でパァーっと。
なーんてことは、おくびにも出さず、優しい先輩は50人分の差し入れを持って、義理を果たすのです。
クラシック、得意じゃないんだけど、優しい先輩だから。

コンサートは、1,200人収容の市民ホールで行われ、結構本格的なものでした。
私はといえば、ほとんど舟を漕ぎながら。

後日、Sは照れくさそうに聞いてきます。

  「どうでした?」
    「うん、みんなちゃんとしてるんで、ビックリした。長いんだ」
  「ハイ、7年続いてるんですよ」
    「結構、若い娘もいるじゃない。楽しいねぇ」
  「エェ(照れ笑い)」
    「あん中にいるんじゃないの?カノジョ」
  「ハイ、フルート吹いていたのと、付き合ってます。3年かな?」
    「!!……」

楽しいじゃん、市民楽団。
明るいねぇ、吹奏楽の未来。
音楽サークルには出会いがあり、それは田舎のカラオケ倶楽部でもまた、同じなのであります。
(つづく)