「連休は忙しいですか?」
「うちは観光地ですからね、一年中で一番忙しいです」
「どれはいいですねぇ」
「それが、あまりよくないんですよ。忙しいと、(パートの)おばちゃんの機嫌が悪くなる」
「うちなんかも夫婦でやってるでしょう。頭に来るようなことがあると逃げ道がない、もういけません」
「カットショップですね」
「(笑)それでも、うちの場合、予約が中心だし、接客できる人数に自ずと限りがあります」
「飲食店はねぇ、お客様をどんどん入れちゃうんですよ、できもしないのに」
「だからと言って、スタッフを大勢用意しても、来なかったら困りますしね」
「経営者としては、ギリギリの人数で、忙しいのを前提にしたくなるんです」
「なるほど」
「ただ、いい点は、そこそこ流れのある街道筋に出店していれば、新規客をゲットできる」
「床屋は正反対ですね、リピーターばかり。一度、店を決めたら、なかなか変わらないから」
「そうですね、それに、在庫がないってのも、羨ましい」
「だけど、先細りになる不安はありますよ、新規顧客獲得は難しい」
「だったら、客単価を上げる方法を考えればいい。白髪染めとかシャンプーとか育毛剤とか」
「お客様としっかりコミュニケーションを取れますからね」
「マッサージチェアなんかも置いてみるといい。マッサージはキーワードかも」
「美容室なんか、ネイリストを置いているところもありますね」
「人口減少社会では、単純な拡大戦略は無理なんです。だから、アライアンス(提携)が重要なんだ けど、得てして単純に捉えていることが多い。例えば、がん保険なんかは、他生保や銀行・郵便局と の提携に一生懸命だけど、それだと自前の代理店が育たない。本当は、各地に代理店のショップ展開 して分身を作り、異業種のタニタやオムロンと共同で事業を進めるのがいい」
「それって、やってないんですか?」
「発想できないでしょうね。業界は視野狭窄なんです」
「最近は、スーパーの中にお店があるようですが」
「保険ショップを、保険の相談をする場所と定義してるけど、世の中で保険のことを本気で聞きた がってる人なんて、むしろおかしいと思う。それが常識」
「聞きに行こうなんて、思ったことありません」
「だけど、ほとんどの人は健康に関心がある。だから、ショップを健康情報発信基地と定義して、仕 事を進めることが大事なんです。まずは、集客しなきゃね」
「うーん」
「散髪業界の場合、千円カットなんて出てきてるけど、それとは何が違うかを明確にしたい」
「気持ちの良さってことでしょうか」
「そう、リラックスできること。情報交換が可能であること」
「そこのところが強みであると」
「なので、床屋さんも、専門分野はもちろん、睡眠や運動も含めた健康情報を抑えておきたい」
「なるほどねぇ」