都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

クローズアップ

警察小説と呼ばれるミステリーを読んでいて、いつも不思議だったのは、警察官たちの上昇志向が強く、手柄をめぐっての出世争いみたいなことに必死であることでした。

一般のサラリーマン社会では、それほどあからさまなやり取りはなく、穏やかな日常だと思うんだけど。これ、思い違いでしょうか?

だけど、最近気づいたのは、未だパワハラの階級社会である警察組織では、現場の仕事があまりに過酷で、恋人や家族にまで影響があるので、一刻も早く管理業務につきたいと考えるのが当たり前だというのが、業界常識だってことです。

フツーのサラリーマンは、出世欲をなくした方が楽に生きられるってとこ、ありますからね。

警察では、下っ端でいる限り、いつまでも理不尽と闘わねばならないと、そんな感じ。あくまでも体育会系体質で、早く上級生になりたいと。そういう職場なのであります。

 

『クローズアップ』(今野敏著・集英社)は、そんなことを考えさせる作品でした。

週刊誌とテレビと警察とが協力し合いながら、殺人事件の解決に当たる。そんなわきゃねーだろと思いながらも、グイグイと引き込んでいくのは、作者の人物描写の力量です。マスコミにもダークサイドに身を置く者がいるし、警察にだって一般庶民と変わらない気弱な人間だっている。そこのところを、絶妙の匙加減で描くのが今野敏ワールドです。84点。