ちっちゃい子供は、仮面ライダーになりたいなんて思いますが、成長とともに「そんなわけねーだろ」となります。
しかしながら、思春期を迎えるころになっても、音痴なのに歌手になりたいとか、全く勉強していない劣等生なのに社長になりたいなどと本気で考える人もいるそうで、こういう等身大の自分を見る力や先を見通す力が極端に弱い若者が犯罪に走る傾向が強いといいます。
「あんなやつ、死んでしまえ」という思想を持った子供が少年法で守られているなんて情報を得ると、その先を考えず行動に移すって話が『天使のナイフ』(薬丸岳著・講談社)です。
遺族からすれば、憤懣やる方がありません。人を殺しても、厳罰に問われない現実。江戸時代だったら仇討ちなんだけどねぇ。実名報道一つとっても、加害者と被害者の扱いに開きがあります。
この作品、江戸川乱歩賞の受賞作で、しっかりと作り込まれていてドンデン返しも見事なんだけど、薄い確率が重なり過ぎていて、現実離れしているように感じてしまいます。リアリティーがない。
難しいですね、フィクションの世界。出来過ぎていてダメだなんて、なんか惜しい。85点です。