その昔、フジテレビに横澤彪という天才プロデューサーがいて、『オレたちひょうきん族』とか『笑っていいとも!』など、バラエティ番組の礎を築き上げました。続いたのが、日本テレビの土屋敏男でして、『電波少年シリーズ』で一世を風靡したのは記憶に新しいところ。そして、今の時代を代表するプロデューサーが元テレビ東京の佐久間宣行です。普通、番組の制作スタッフが前に出てくることは、ほとんどないんだけど、この3人は芸人たちに尊敬すらされていて、演者のほうから話題にされ、裏方なのに目立っていました。
佐久間宣行は、出世していくことをよしとせず、現場にこだわって退職し、フリーになってしまいます。自分の目で確かめて面白いと思った原石のタレントに拘って、その隠れたキャラクターを引き出し、爆発させるという快感に目覚めてしまいました。自分にはできないことを代わりにやってもらえる手法を発見するのが何と楽しいことか。そんな人を増やすだけ、表現の幅が広がっていく。
そのための徹底した劇場通い。バラエティ番組も見まくっています。管理職なんて、やってられません。
若林正恭は、佐久間宣行との出会いによって、『あちこちオードリー』で才能を開花させました。人見知りを自認する彼は、普通人の感性をもって、相手に気持ちを寄せながらその魅力を引き出す力が並外れています。
そのために、セットをこぢんまりした居酒屋風にしました。相方の春日俊彰をマスターとして設定し、画面を安定させます。ほとんど喋らないんだけど、実は春日は笑顔の達人で、場の空気を和ませる重要なポジションを担っているのです。
プロデューサーの役割は、相性の良さそうなゲストをマッチアップさせること。
今週の回は、朝日奈央とベッキーでした。これがまた絶妙で、あっという間に時間が過ぎていきます。面白い×面白い=メッチャ面白い。
フジテレビが面白くなくなったのは、お台場に移転したからだという人がいます。サブカルの聖地・下北沢から遠ざかりました。
番組制作に携わる人は、出演者の気持ちに寄り添っていかないと、相思相愛とならないのであります。