紅萬子という女優さんがいます。NHKの朝ドラにちょくちょく起用されていて、顔を見れば何となく思い出しそうな、だけど名前が分からない、そんな脇役です。芸名については、NHKが難色を示し、いっときは「まこ」と読ませていたんだとか。玉袋筋太郎が知恵袋賢太郎とされたのと、同じ理由です。まぁいろんな人に名前を印象付けるのは間違いないところですが…。
その紅さんが脇を固めて出演しているのが『侍タイムスリッパー』です。
この映画、インディーズで単館上映であったものの、口コミで話題が広がって、全国展開された話題作です。TOHOシネマのサイトで★4、3とぶっちぎりの高評価だったので、迷うことなく観に行きました。
物語は、現代の映画撮影所にタイムスリップした幕末の侍が、時代劇の斬られ役として奮闘する姿を描いたコメディで、『テルマエロマエ』の時代劇版といったところ。コントでいうところの設定がキーになっていて、そのコンセプトに従って俳優陣が生き生きと動き出すスタイルです。
『水戸黄門』や『桃太郎侍』など、時代劇には勧善懲悪という基本ルールがあって、めでたしめでたしに向けて起承転結へと繋げていくのが暗黙知なんだけど、『侍タイムスリッパー』もそのストーリー展開が分かりやすいことこの上なし。そういう安心感こそが、時代劇を支えているのであり、高齢ファンの気持ちをしっかり掴んでいたように思います。無名ながらも演技派揃いの役者たちは、映画に厚みを加えておりました。
いやぁ、楽しかった。映画っぽい映画。ザッツ・エンターテイメントでありました。