今季のプロ野球は、終盤の逆転劇やサヨナラゲームが多く、両リーグ共に面白い試合が増えているように思います。
その理由は、試合の後半に出てくる投手が不調であること。大勢・湯浅・栗林をはじめ、昨季に活躍した抑えの切り札が安定していないところに問題があるようです。
だけど、その方が見ている分には面白い。スポーツは逆転があるからこそ、スリリングなのではないでしょうか?
そういう意味では、サッカーが盛り上がりません。一点取られただけで、憂鬱になる。
卓球やバレーボールもそういうところがありますよね。逆転がなかなか起こらないというところ。勝負事は、ディフェンスを固めることで勝率が上がる、そういうものです。
で、相撲なんだけど、土俵際で粘ってうっちゃるというシーンがほとんど見られなくなりました。
それは、力士の巨大化で、冷蔵庫を持ち上げるような技が、現実的でないからのようです。
ってなわけで、『うっちゃりは何故消えたのか』(真石博之著・日本経済新聞社)をAmazonで購入しました。20年以上前に出版された本ですが、大相撲の歴史が数字でわかるように編集されています。例えば…
・平成11年7月場所では、取的(幕下以下)が769人で、関取(十両以上)が66人、行司が46人で、業界全体では1,102人となっている。
・昭和30年から平成7年までの40年間で、平均身長は5、5センチしか伸びていないのに、平均体重は156、5キロと43、2キロ増えている。
・横綱在位時の勝率ベスト5は、①玉の海②大鵬③千代の富士④貴乃花⑤北の湖で、いずれも8割を超えている(12勝以上ってこと)。
・昭和39年までは、部屋が別でも一門が同じならば本場所で戦うことがなかったので、有力力士が多い一門にいると有利だった。
・一門の保守本流は、武蔵川・春日野・三保ヶ関らが属する出羽海一門。
・他に二所ノ関・高砂・時津風それに立浪・伊勢ヶ濱連合の五つの系列がある。
・近年は学生相撲出身者が増えて、中卒で入門した力士とは修行のプロセスがあまりにも違い、噛み合わない部分が増えている。
・引退年齢は平均で31、4歳。寿命が短く、引退後の人生が長い。
・新弟子が関取(十両以上)になる確率は、8%程度に過ぎない。
・協会からは、幕下以下の一人あたりに年額180万円が支給されている(給与ではない)。だから、部屋では弟子たちを簡単に辞めさせない。
・いずれにせよ、それだけではやっていけないので、後援者や後援会に頼る構図が出来上がっていく。
・相撲が国技と言われ出したのは、国技館の誕生と軌を一にする。柔道に先んじたネーミングが勝った。
・江戸時代には、女性が相撲を見ることが禁じられていた。土俵に上がるどころではない。
いろいろ勉強になりました。
無理偏にゲンコツという土壌が、学生力士やモンゴル組の参入によって、変わっていくのが面白い。
それと、絶対に関取になれそうもない力士をそれでも抱えていく構図は、他のスポーツとはっきり違います。付き人ってところもね。
肉体が巨大化する中での妥協点が、無気力相撲に関係していたと思うけど、ガチンコを声高に叫ぶのであれば、年六場所はやっぱり多過ぎます。
それにしても、若元春という力士が唯一のうっちゃりの使い手であるらしい。143キロかぁ。頑張って欲しいねぇ。