東大入試の日本史には、第二次大戦後の近代については、触れてこないんだそうです。
不思議ですよね、他の科目は教科書が終わるまでやるのに、歴史については太平洋戦争まで行かずに終わる。どうも、教師が意図的に避けているようでした。
なので、私たちは関ヶ原の戦いのことはよく知っているけれど、朝鮮戦争のことについては情報を持っていません。
実際に、韓国と北朝鮮は民族が入り混じっているので、必ずしも敵対関係ではないってこと。一族が南北に別れてしまうケースも少なくないのです。
だから、韓国の大統領は、時として北寄りの政策を打ち出したりする。その際は、日本を敵対視してバランスを取るわけですね。みんな仲良くって発想はないらしい。いつも「恨み」の対象を持っていなければ、落ち着かないようでもあり、ややこしい気持ちにさせられます。
相場英雄氏の『越境緯度』(徳間文庫)は、38度線を巡る韓国・北朝鮮、そして日米中のそれぞれの思いを写し出して、複雑な事情を描いています。新潟県三条市出身の相場氏は、拉致被害者への思い入れもあって、テロ国家としての北朝鮮を批判的に捉えている一方で、韓国の煮え切らないスタンスにも好意的ではないらしく、未だに妥協点を見出せない朝鮮戦争の決着を小説の中に求めました。
2007年の作品ですが、現実はもっともっと込み入っていて、一筋縄ではいきそうもありません。それぞれの国が寸止めをして、思いとどまっているのでしょう。
エンターテイメントとしては、物足りなさが残ります。日本人である大田原教授の言動に、今ひとつ感情移入ができませんでした。
相場作品としては、ちょっと期待外れ。78点ってところかな?