ジャンルの違う者同士が対談するというのは、なかなか難しいものがあります。
幅広い知識がないと、聞くだけに終始してしまい、対談の意味をなさないからです。
だから、あるようでないのが対談本であって、登場する二人が同じように発信するというケースは、なかなかありません。
手練れの二人が丁々発止、どんな球を投げても打ち返すさまが美しい。
それが、『歩を「と金」に変える人材活用術』(廣済堂新書)です。
たとえば、こんな感じです。
・盤上でも組織でも、一番大事なのは効率である。突出した個人のパワーに頼ることではない。
・能力というのは、きっちりした普遍的なものではなく、その時代時代の社会から求められているものである。
でルールが生まれている。
・将棋が強くなりたければ、「この形は絶対に指したくない」という感覚を大事にしたほうがいい。制約がある
ほど、本筋の手を突き詰めて考えるようになるから。
・日本人はルールを変えられないと思い込んでいるところが問題だ。ルールを守れても作ることができない。
・オフト監督は「日本人に欠落しているのはディシジョン・スピードだ」と言っていた。
・天才というのは想像力と創造力を兼ね備えた人たちなので、他人に学ぶわけじゃない。だからあ、説明が苦
手になる。
・理解するということは、短縮することである。経験を積めば、無駄をショートカットできる。
・駒をたくさんとって相乗効果を考えるより、いかに(駒の能力が)重複しないかを考えるのが大事なことだ。
・トルシエ監督は、ガチガチにチームを管理した。「とにかく俺の言うとおりに動け」と。私(二宮)は「植民地の
総督」と名付けた。
・無菌状態で育つと猜疑心が育たない。社会は雑菌だらけだから、心の予防接種が必要だ。
・アメリカでは「父親が子供に教えるのがキャッチボール。兄が弟に教えるのがバスケットボール」と言われて
いる。
プロフェッショナルの矜持とは、見えないものを見るチカラだと改めて思いました。