都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

蜃気楼の犬

小学生の私は、ドリフの加藤茶の影響を受けて、肥溜めからこぼさないように対象物汲んで前後に腰を振りながら歩くネタのコピーでクラスの人気者でした。「ちょっとだけよ」という名ゼリフも、真似ていたような。当時の笑いは、「どったの?」とか「やんなっ!」とか「ゲロゲーロ」とか、それぞれの芸人が競い合うようにキャッチフレーズを持っていて、それをしつこく繰り返すことで、名前を売っていたように思います。YouTubeどころかビデオもない時代ですからね。テレビが流行の先端であり、CMなんかも覚え込ませるためのメロディーが印象的で、名曲が多かったと記憶しています。

荒井注がいなくなってからのドリフ路線は、私の趣味から外れてしまい、そこからはひょうきん族へと興味が移っていきました。スピード感がハッキリ違っていたからです。アイドルを転がしながらのわかりやすい笑いは、手抜きであると下に見ていました。

そのレジェンドである加藤茶が45歳も年下の女性と結婚したと聞いた時は、心臓が停まりました。こっちはいいけど、向こうはどう考えているんだろうという想像力がちょっとでもあれば、逆に眠れなくなると思います。けっこんって?

 

呉勝浩の『蜃気楼の犬』(講談社文庫)は、二回りも年の離れた妻を持った県警捜査一課の優秀なベテラン刑事が主人公の警察小説です。

警察の第一線で活躍する刑事の場合、ただでさえ家族を顧みないところがあるにも関わらず、それが二回り年下の妻だというから斬新です。加藤茶以上にあり得ません。芸能人と違って、刑事は外へ出っ放しですからね。

案の定、夫婦仲が上手くいかなくなる。そこのところが新しい。離婚する刑事の家庭を描いた作品は、むしろそれがほとんどですが、年の差婚は発明です。うまくいくわけがない。事件の展開とは全く関係なしに、プライベートがぐちゃぐちゃになっていくところが切なくも面白い短編集です。蜃気楼のような犯人を追い続ける犬って意味らしい。そして、刑事は猫じゃなく犬だということを学びました。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 17点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点

【読後感】爽快感・オススメ度 16点

【合計】82点