警察の人間が犯罪に加担していて、事件発覚後にそれを庇おうとする人たちが出てくると、がんじがらめになって捜査が前へ進まなくなるっていうパターンが、ミステリーで最も多く使われるシチュエーションです。ほんと、テレビドラマではイヤってほど使われる手法だと思います。
実際はどうなんでしょうね? 警察絡みの隠蔽工作。そんなことをされたら、冤罪か迷宮入りしかなくなってしまう。三億円事件なんか、その典型だったような気がします。
『架空犯』(東野圭吾著・幻冬舎)は、この使い古された形式をありもしない架空の犯人を立てることで、成立させました。
事件は、都内の高級住宅街で火災が発生し、焼け跡から都議会議員と元女優である夫婦の遺体が発見されたところから始まります。
当初は無理心中かと思われたものの、捜査が進む中で殺人の可能性が浮上し、事件の真相が徐々に明らかになっていくんだけど、捜査一課の担当刑事は同僚刑事の仕掛けた罠にハマってしまいました。それで、全てが終わるハズのところ、それで良しとせず、さらに踏み込んでいくのが東野圭吾であり、本作の真骨頂であるわけです。
最後に交わされる会話がドキッとさせます。
「下手に両思いになったりするから、失恋する。片思いなら、傷つくことも傷つけられることもありません」
もう一つ、岡本太郎の言葉を思い出しました。
「片想いも立派な恋愛なんだ。自分が片想いをしている。そう思っている時の方が強烈だ。つまり、相思相愛、おめでたいのが恋愛ではなくて、片思いが恋愛だと言える」
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点
【読後感】爽快感・オススメ度 17点
【合計】89点