都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

将棋の生放送

将棋の実況中継は、テレビに不向きであって、特に二日かけて行われるようなタイトル戦だと、ほとんど静止画です。

対局者が指す回数は、二人合わせて平均で120手ぐらい。

名人戦は持ち時間がそれぞれ9時間ですから、そんなもんにずっと付き合うわけにはいきません。

だけど、ネットで見るのにはちょうど良い。ABEMAだとタダで観られるので、なおのことありがたいです。

 

藤井名人の三連勝で迎えた第四局は、千日手指し直しで先後入れ替えとなり、永瀬九段が先手で始まりました。最近の将棋は、テニスのサービスゲームみたいな感じで、作戦を立てやすくなる先手番が少し有利だというのが定説で、前日に千日手に持ち込んだ永瀬九段がちょっとだけポイントを稼いだのではないかとの見方もあったのですが、そこは藤井聡太が相手ですからね。名人は珍しいほどに受けに徹した構えを作り上げ、じわりじわりと追い込みをかけて、相手に何もさせない受け潰しの勝利を目指しました。まさに横綱相撲といったところ。

途中、永瀬九段が頭を抱えている様子は、金魚が酸素を求めているような空気感であり、もうどうやったら勝てるのかと思わされたものです。こういうのって、手合いが違う駒落ち将棋で見られる光景でして、実際、AIによる評価値もじわじわと藤井名人に傾いていき、いつものパターンにハマったような…。

ところが、徹底的な受け潰しは、ちょっとしたところから綻びが出るもので、滅多にない藤井曲線の揺り戻しが起こったのです。

藤井聡太がスゴいのは、相手が指すかもしれない絶妙手まで見えてしまうってとこ。自分が与えたスキに気付くと、勝手に転ぶのが面白い。対局者が揃って自分の方が有利だと思うのは、よくある話ですが、二人ともが青ざめているのって、なかなか見られるものではありません。

お互いが残り10分となってからの攻防は、スリルとサスペンスの塊でした。

スゴいんですよ。ABEMAの中継には、現役プロ棋士2名によるダブル解説に加えて、人工知能が4〜5通りの読み筋を示し、それぞれに評価値を忘れずに付ける。対局者が駒を握るたびに、心臓の鼓動が跳ね上がります。あ〜っ、そっちじゃない、なんてね。

これ、野球で言えば、ピッチャーが投げる前に球種と相手打者の得意不得意のゾーンが表示され、それが『巨人の星』みたいにスローモーションで展開されたような感じ。わかるかなぁ、わかんねぇだろうな。

とにかく、長丁場のタイトル戦で両者が共に1分将棋に追い込まれ、しかも、ほとんど互角の終盤戦というのは滅多に観られるものではないんです。それを見届けました。スゴい迫力でした。藤井聡太絶対王者だけど、たまに負けるとそれはそれで面白い。

それにしても、将棋とインターネットの相性は抜群だと改めて思いました。

将棋連盟にとって大口のスポンサーである新聞社が傾き始めた今、ネット配信を中心としたビジネスを加速させるべきだと思うのであります。