日本最大の歓楽街は、新宿の歌舞伎町であることについて異論はないでしょう。
ところが、夜の街としての歴史は意外に浅く、終戦までこの辺りは閑静な住宅街でありました。
東京大空襲で一面が焼け野原となったことをきっかけに、観光の街として復興させる方針のもと、町名を歌舞伎町と一新。街の中にはたくさんのT字路を組み込み、あえて人が歩きにくいように設計されています。つまり、意図的に大勢が滞留するように考えられていたのです。
その結果、3,000軒を超えるバー、キャバレー、ラブホテルなどが密集することになり、世界でも有数な夜の盛り場となりました。
ヤクザはもちろんのこと、外国人マフィアが横行し、治安が劣悪になったところ、コロナの流行が流れを止め、一定の秩序を回復する流れの中にあります。
『歌舞伎町ララバイ』(染井為人著・双葉社)は、そんな歌舞伎町の現在を描き出した作品です。
ビビリの私は、そういうお店に近づくことはありませんでしたが、免疫のない人が断片的な情報にかどわかされると深い沼にハマってしまう感じが的確に表現されているように思います。酷い目にあった時、ちょっとでも優しくされたりすると、一気にタガが外れていくっていうの、分かるんだなぁ。
ところで、客の飲み物に薬物を混入させ、昏睡させた上で金品や所持品を奪う行為をドリンクスパイキングというんだそうです。そんなことされたら、どうにもなりませんね。怖い怖い。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 17点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点
【読後感】爽快感・オススメ度 17点
【合計】84点